後継者の使命は『会社のDNAを受け継ぎ、会社を発展させる』こと

最終更新: 7日前



会社を継ぐとは?

2006年に会社法が施行されました。それによって資本金が1円でも会社が起こせるようになり、起業ブームとなりました。若い人でも起業を志す人が増えいます。一方、2008年に経営承継円滑化法が施行されました。経営者から会社を継ぐ際に発生する経営不安、資金調達や税負担を軽減して、減少し続けている日本の会社数に歯止めをかけることが目的です。

この「起業」と「事業承継(経営承継)」を比較すると「会社を継ぐこと」の本質が見えてきます。

会社の使命は「ゴーイングコンサーン」

起業と事業承継の最大の違いは「ゴーイングコンサーン」の重みの違いです。

会社の最大の目的の一つは、将来に渡って継続することです。これはゴーングコンサーン(going concern=企業の継続性)と呼ばれ、社会的使命であり責任であると言われています。


会社は自社を利用している顧客へサービスを継続することで、社会活動のいったんを担っています。同時に従業員の雇用を守ることでその家族や地域に貢献をしています。仮に経営者が会社を継続しないことを前提に経営していて明日にも突然に倒産したら、商品やサービスは停止し、従業員の収入がなくなってしまい、株が紙ずくになってしまいます。それでは社会全体が不審を抱き、社会活動が崩壊してしまいかねません。


それゆえに、社会の仕組みやルールもこのゴーイングコンサーン(=会社が継続すること)を前提に作られています。例えば、掛取引や手形などの決済手段や借入金やリースなどの他社からの賃借、株主からの投資なども会社が続いていくことを前提に契約活動が行われています。会社が作る決算書もこの考え方を会計上の原則としており、会社を継続することの社会的な責務は大きいのです。


起業したての会社にもゴーングコンサーンはあります。銀行から借りたお金を返す、新商品を喜んでくれている顧客に継続してサービスを提供する、従業員の生活を守る。しかしながら、これから社会的な責任を担っていく起業と比べ、事業承継ではすでに社会的な責任を担っています。ここが起業と事業承継の最大の違いです。

後継者の使命は「継続」と「発展」

では、後継者は既存の事業を継続さえすればいいのか、というとそうではありません。

会社がゴーイングコンサーンを続けて行くためには、それを受け取る後継者が必要です。そして、後継者は会社を継続させるために既存の事業を現経営者から継いでいきます。これが「既存の事業の継続」です。一方で、市場や商品には寿命があるため過去から続いている既存の企業活動を維持するだけではなく、新たなサービス活動や商品開発にも果敢に挑戦し続けて行くことが必要になります。


次の図を見てみましょう。

「市場ライフサイクルと事業承継時期:ゴーイングコンサーン」の図では、一つ目の波を市場のライフ サイクルとしています。このライフサイクルは市場によって寿命は変わります。例えば、食品市場、インフラ市場(水道・ガス・電気など)のような生活必需市場は長い期間でサイクルします。逆に、IT業界などの新興事業はこのサイクルが短い傾向にあります。


さらに市場から深掘りして「商品」でライフサイクルで考えるとより寿命は短く、早期の新陳代謝が求められます。(昨今はグローバル化、情報化の影響であらゆる商品のライフサイクルが短くなっています。大手中小を問わず、新しい取り組みを求められています。)

経営者には市場や商品のライフサイクルを見極め、新陳代謝を自ら起こして永続的な成長を続けるしくみと風土を作ることが求められます。図の2番目の波のように、既存事業が衰退期に入る前に次の準備を始めて成長軌道に乗せる。これを繰り返すことで、会社は永続的な曲線を描くことができます。


まさにこのリスクの少ない時期(成熟期)に事業承継の準備(後継者育成)に入ることを推奨しています。成熟期は会社が安定しているので、会社や後継者・新規事業への負担が少なくなります。逆に、衰退期に承継を始めると結果が出ない時期が続くため、後継者が成長を止めたように見えてしまい従業員も支えることができなくなり、離れていってしまいます。

事業承継後の取組で60%以上の会社が成功した

もう一つ事例を見ていきましょう。

こちらのグラフは「事業承継後の取組と業績変化」を示したものです。(中小企業白書2014より)

事業承継後の取組を見てみると、「異業種への参入」「赤字部門からの撤退など業態見直し」「新商品開発」「新たな販路開拓・取引先拡大」などの取組を行なった企業の60%程度 が事業承継後の「良くなった」「やや良くなった」と業績改善を感じています。あまり変わらないを含めると82%以上が現状以上の業績となっています。一方、取組を行わなかった企業が「良くなった」「やや良くなった」が26%程度に対して、「やや悪くなった」「悪くなった」が34%程度であることも見逃せません。これらを勘案すると後継者による新規参入や販路拡大が会社へ与える効果は大きいと言えます。

このように後継者は現経営者が積み上げた既存の事業を引継ぎつつ、新しい風を会社へ吹き入れることで会社を継続させることが使命になります。

後継者にとって「会社を継ぐ」とは「会社のDNAを受け継ぎ、会社を発展させる」ことなのです。