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​経営研究

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未来予測の鉄則

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テトロック氏は10年以上にわたり何万人もの一般人に様々な予測を行ってもらい、その結果「良い予測」についての条件をまとめました。不動産業解に照らし合わせてご紹介します。

それは一見するとあたり前のことですが、心に留めておくことで未来予測の精度を確かに高めてくれます。

1. 努力が報われそうな問題に集中する

端的に言うと「難易度が高い予測には手を出さない」ということです。

研究によって「情報が少ないこと」「時間軸が遠いこと」は予測が難しいことが判りました。例えば、「モロッコの3ヶ月後の不動産相場」は日本の情報と比べれば少ないですし、「2030年の東京の不動産相場」は先のことなので予測は難しいです。(1900年から2000年まで10年ごとに年表をまとめると10年ごとに世界が様変わりしていることが判ります。アメリカは1930年に「向こう10年間は絶対に戦争をしない」と国防計画に書いたものの1939年に第二次世界大戦が始まっています。近いところでは1990年には世界中の殆どの人がインターネットをしりませんでした。これを受けてアメリカの国防計画は4年ごとに見直されるようになりました。)

予測は取り組んでみるまで難易度は判らないことが多いのですが、明らかに予測が難しいものには手を出さないようにしましょう。

2. 一見手に負えない問題は、手に負えるサブ問題に分解する

例えば「大江戸線の延線で大泉学園前(仮)の相場はどれほどあがるのか?」という問題に対して、いきなり数字を予測するのは容易ではありません。こういう場合は分解してみましょう。「いつの相場か?(完成直後で良いのか?)」「完成時ならばその時期の東京の相場」「大江戸線の既線の相場」「過去に延線されたケースの上昇率」「過去に沿線されたケースの状況」など予測が可能なケースに分解し、調べられる程に分解し、項目を増やしていきます。最後に統合すると一見して手に負えない問題も信憑性の高い予測が立てられます。

 

フェルミ推定の手法と同じ考え方です。遠回りのようで最短距離を辿ることができるはずです。

3. エビデンスに対する過少反応と過剰反応を避ける

優れた予測を立てる上で意見のアップデートは「歯の健康における歯磨きとフロス仕上げのようなものだ。退屈で、ときには面倒だが、長期的な見返りは大きい」。これは予測についての適切な比喩です。予測をするときは新しいエビデンス(情報・意見)による予測の更新を、歯磨きのようにこまめに行うと精度が高まります。

 

そのときに、新たなエビデンスが「正しいか誤っているか」を適切に判断しなくてはなりません。それは容易なことではありませんし、絶対的な判断基準はありません。手法の一つとして「このエビデンスは40%程度信頼できそうだ」「こっちは80%程度信頼できそうだ」とひとつひとつに対して過少でも過剰でもない反応をすることでエビデンスを適切に扱うことができるようになります。

4. どんな問題でも自らと対立する見解を考えよ

どんなに優れた指導者・経営者でも完璧に未来を見通すことはできません。殆どの場合、彼らは成功と失敗を繰り返しながら前に進みます。成功の可能性を高めるには自分自身に確固たる意見を持ちつつ、対立する意見に対して注意深く耳を傾け、質問を重ね、必要と考えるならば受入れ自分自身の意見を更新します。ときには意見を更新するには痛みを伴うこともありますが、その痛みは後に失敗するよりも軽傷であることが多いはずです。

ヘーゲルが提唱したアウフヘーベン(止揚)のように「意見Aと対立する意見Bを受け入れ、意見Bを利用することで更に良い意見Cを見出す」ことが求められるのです。

5. 不確実性はできるだけ細かく予測しよう

未来は不確実で、予測は不確実に対して見解を持つことです。それゆえ「どちらとも言えない」「可能性は高いと考える」のように曖昧な表現を使いがちです。それは伝える相手に対してはもちろん、自分自身でも幅を持たせて見解を持つことになります。「どちらとも言えない」は50:50なのか45:55なのか42:58なのか。仮に42:58であるならば後者の方が確率が高い見解を持っていることが明らかになります。また、「可能性が高い」は99%なのか90%なのか70%なのか。99%と70%では確率は29%違うこと

見解を持つことになります。未来予測は「最終的な判断の材料」です。細かく予測することで判断へ適切な示唆を行うことができます。

曖昧な表現を持ち入りたくなるには、私たちが未来が不確実性であることを十分に理解しているからです。しかし、未来予測の精度を高めるには失敗を受け止め、改善を試みることが肝要です。また、意思決定者は予測者の予測が誤ったときに予測者を責めてはいけません。責めを受けることで曖昧な表現に立ち返ってしまいます。「仮に90%の確率で成功します」と予測しても10%という確率で失敗するのです。

6. 失敗したときは原因を検証する。後知恵のバイアスに気を付ける。

未来予測は、予測したときと結果がでるときに時間的な開きがあります。それゆえ予測の反省を行わないことが多いのです。スポーツだろうが勉強だろうがビジネスだろうが反省しないで成長することはできません。まずは成功失敗に関わらず反省し、失敗したときは原因を検証しましょう。

しかし、「後知恵のバイアス」には気を付けてください。「あー、なるほどね。いや、私もその情報は知ってたし、○○さえ知っていれば予測できたんだよねー」というように結果から予測を眺めると、簡単に予測できるように感じてしまいます。手品の種を知ってから手品を見るようなものです。後知恵のバイアスにお気を付けください。

未来予測は本当に難しいですが、その精度を高めることはできます。包括すると「真摯に向き合うこと」だと私は思います。

予測を行う理由として「夜に車を運転するときにライトを点けて走るのと、点けないで走るのは、どっちが事故にあいずらいと思う?」という比喩があります。経営とは暗闇を走り続けることだと思います。そのときにライトになってくれるのが未来予測なのだと私は考えています。