Analysis

​経営分析

Case

売上のゲーム理論

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A社経営者:「近所に新しく不動産会社B社ができた。B社は仲介手数料を半額にする施策を取ると言う噂を聞いた。対抗するために仲介手数料を下げなきゃいけないだろうか?他にもできることはあるだろうか?」

 

こんなケースから「売上=価値提供」であることをゲーム理論を用いて分析します。

1. ゲーム理論とは?

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ゲーム理論を端的に言うと「駆け引き」を考える理論です。駆け引きは会社同士はもちろん、営業マンと顧客、経営者と従業員など様々な場面の理論分析で活用できます。

経済学などで用いられるゲーム理論は私たちの日常を数理で表してくれます。数理は一般化されているので分析はもちろん、経営判断に適しています。

2. 「仲介手数料半額」をゲーム理論で分析する

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仮に2社の実力が同じで、仲介手数料が100万円、その周辺の売買件数が10件とします。

 

左上:双方が満額であれば5件ずつ分け合い利益は500万円となります。

右上&左下:片方が半額であれば半額に人が流れ8件と2件なり、利益は200万円と400万円になります。

右下:双方が半額であれば5件ずつ分け合い利益は250万円となります。

ご覧のように、A社B社にとって最も良い選択は「満額」になります。仮にB社が半額にした場合、A社も半額にした場合の方が利益が大きいので(満額利益200万円<半額利益250万円)半額を選ぶことになります。

重要な点は「B社にとっても満額の方が利益が多い」ということです。論理的に考えればB社も満額のほうが嬉しく、半額にはしたくないのです。

よって、A社経営者がとるべきは「相手が半額にしてくるまで満額のままでいる」という判断です。双方とも暗黙のうちに協力しあい、満額でい続けることがベストな選択です。

3. 別のケースを確認する

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今度は半額にした場合、7件:3件の割合で成約すると仮定します。

 

そうすると仮にB社が半額の戦略をとってきてもA社は半額にする理由がなくなります。(満額利益300万円>半額利益250万円)

このケースではなおさらA社が半額の戦略を取る必要はなさそうです。

4. B社が半額にしてくることはあるのか?

上記のケースをみると実力が拮抗している場合は仲介手数料を下げる理由がありません。B​社が仲介手数料を半額にするのは、B社がA社よりも価値提供ができない場合です。

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ここで「お金とはなにか?」に立ち返って考えてみます。お金とは大昔に物々交換をしていた人類が自分の好きなものと交換できるように発明した「物物交換する際の尺度」つまり「物の価値」のことです。B社が仲介手数料を半額にするのは「A社と同等の価値が提供できない」から行うのです。

B社が半額にするのは図のような場合ではないでしょうか?そうするとA社はますます半額にする理由はありません。

5. 仲介手数料から見えてくる「売上=価値提供」の論理

では、実力が拮抗している場合はどのようにして売上の向上を目指すべきでしょうか?

不動産業界は、上記のように仲介手数料を上げることも下げることもできないように定まっています。あるいはあまりにも多くの業者が仲介手数料を下げたときは、それが相場に定まります。

1件につきもらえる手数料が決まっているので、売上を伸ばすには「件数を伸ばす」選択肢をとることになります。​エリアでの売買件数は市況などが作用し、私たちが関与できません。つまり他者からパイを奪うことです。

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A社とB社が拮抗している場合「顧客が認める価値」を提供できる方に顧客は集まります。

​結果として、図のようにα(顧客に認められる価値)が高まるとA社は顧客をB社から奪うことができ、利益が増えること(500万円→600万円)になります。

このαを高め、提供することが不動産業で利益を高める方法のひとつと考えられます。

「顧客に認められる価値」を提供すること。これが他業者に勝る方法だと考えられます。そのなかで「仲介手数料を半額にして打ち出す戦略」は良い戦略とは言えなさそうです。

ゲーム理論は「仲介手数料を半額にすることは良い戦略ではない」のように、一見すると当たり前な論理を数理の視点から明らかにすることができます。

「当たり前でしょ」と鷹を括っていると、足を掬われることもあります。ゲーム理論を用いて「当たり前」を明らかにしてみてください!