Case
売主さんにやってもらうこと
高値売却のためには「売主さんの協力」が不可欠です。特に居住しながらの売却の場合、数百万円売却価格が変わることもあります。
成約価格の相場が4000万円の物件を売却する場合、私たちは売却の担当者として方法をアドバイスすることができます。
1. 基本的な考え方は「値下げを最小限にする」
不動産の相場はおおよそ決まっています。4000万円が相場であるならば4200-3800万円の間で売却されると考えるのが一般的です。そこには400万円の開きがあり、4200万円で売却できれば高値成約と言えそうです。
市場はいずれも成約相場から「高値」で出ています。レインズによる販売価格は成約価格の105-110%程度ですから、4400-4200万円程度から販売を始めるでしょう。4200万円を高値と設定するならば4400万円から販売を始めて200万円以下の値下げで売却できれば高値売却ということになります。
「販売開始時価格から値下げを最小限にする」ことが重要です。これが高値売却の基本的な考え方になります。
2. 値下げを最小限にする方法 |アンカリング効果とプラス印象
販売価格も決まり、内見が始まりました。
内見者は「4400万円に相応な物件だろうか?」という目線を持ちます。つまり4400万円を基準価格にします。これを「アンカリング効果」と言います。そして、基準となった価格の妥当性を探るように内見します。この価格を下げさせないことがポイントです。
図のように同じ外観だったとしてもプラス印象で「100万円の軽微なリフォームで大丈夫そう(4300万円が妥当だろう)」と感じるかマイナス印象で「500万円で全面リフォームしないと住めそうにない(3900万円が妥当だろう)」と感じるかで販売価格は400万円の差が生じます。具体的な数字で考えていなくても同様の勘定を頭の中で行っています。「基準価格の妥当性から値引き金額を決める」というプロセスを辿るのです。
3. 値下げを最小限にする方法 |空室効果でマイナス印象の排除
売主さんから「空室にしたほうが居住中より高く売れますか?」という質問を受けることがあります。そのときは迷わず「空室の方が高く売れる可能性が高いです」と答えて差し支えないと思います。
極端な例を用意しました。「引っ越しで荷物が散乱している部屋」と「荷物を入れる前の部屋」です。同じ部屋ですが全く違う印象を持つと思います。
視覚は「個別の物」に注意が向きやすい傾向があります。不動産は「箱(空間)」を売っていますが、物が散乱していると物に目がいってしまい箱に注意を向けづらくなってしまいます。空室にする最大の効果はなにより「箱に注意を向けさせる」ことができることです。
「空室効果」は積み重ね式に効果を重ねることができます。
高値売却の考え方は「基準金額に妥当性を感じさせる=値下げを最小限にする」でした。そのために「物件磨き」をします。
「この物件は素晴らしいから100万円上乗せして買おう!」ということはありませんから減点方式であることを意識し、減点要素を減らしていきます。表は「印象を高める準備」です。いずれの項目も減点を減らすことを主眼としています。費用が発生する項目もありますが、減点を減らす(=売却価格を高める)ことに有効です。
pdfファイルをダウンロードできるので活用してみてください。
4. 値下げを最小限にする方法 |《商品意識》を持つ
これは居住中販売に当てはまります。
当たり前なことなのですが、売主さんにとって日常生活に溶け込んでしまっているなか自分の家に商品意識を持つことは簡単ではありません。心理効果に「馴化」というものがありますが、人間は単調な刺激に対して慣れるようにプログラムされているようです。「床の傷」も「壁紙の剥がれ」も「キッチンの汚れ」もはじめは気になっていたのに、いつの間にか意識の外に追いやってしまいます。購入希望者が綺麗に磨かれた新築物件を比較対象にしていることを考えると「ちょっと神経質なくらい掃除してちょうどいいです」と伝えることも良いでしょう。売却担当者さんは比較対象に負けないように「自分の家=商品」という意識を持ち続けるように伝えてください。
そうは言いながらも、生活しながら室内を綺麗にし続けることは容易くありません。まずは①販売開始前に大掃除をして②内見の前に準備を行う、などが適当です。
①の際には「不用品の処分」を行うと部屋を綺麗に保ちやすくなります。
②のリストを作成しました。当たり前のことばかりですが、売主さんは「どの程度綺麗にしたらいいのか?」を知りたがっています。明確な回答を持っていくと売却担当者として信頼を得やすくなります。